ナノチューブ先端に金属を充填する

カーボンナノチューブ(CNT)の、直径がナノメートルレベルの内部空間に金属を充填した構造は新たなアプリケーションが期待できます。今までにも、CNT内部に金属ナノワイヤを形成したり、CNT合成と同時に金属が含まれる構造になるようにする研究は数多く行われていますが、歩留まりの問題から、狙った場所に100%確実に充填するのは難しい課題でした。
本研究室では、狙ったCNT1本の先端に、サイズ(直径、長さ)を制御しながら金ナノワイヤを確実に充填できる手法を確立しました。

raman nanoscale2電子顕微鏡内でマニピュレータを用いて、1本のCNTを通電加熱によりカットします。このとき、内径の大きさを決めることができ、先端は開端した形状にできます。ここへ、金ナノ粒子を担持した別のCNTを近づけ、先端に接触させた状態で通電加熱により温めると、金ナノ粒子を構成する金原子が担持用CNTの上を移動します。ここで、熱勾配を調整すると、金原子は開端したCNTの方へ向かい、開端CNTの先端で粒子が析出します。これを、開端CNTの中に入れることができます。
さらに、既に充填した金粒子に別の金ナノ粒子を接触させて通電することによって、次々と連結させながらCNT内部でナノワイヤの長さを伸ばしていくことができます。
一見単純な作業に見えますが、マクロスケールでみられる毛管現象とは異なるダイナミクスが支配的であり、ナノメートルレベル特有の条件コントロールが要求される工程となっています。

Refilling of Carbon Nanotube Cartridge for 3D Nanomanufacturing,
R. Bekarevich et al. Nanoscale, 2016.
doi:10.1039/C5NR08712K