ナノチューブ1本の濡れを計測する

濡れ性は,固体間の凝着力や,固液界面での対流伝熱,流体抵抗などを理解する上で重要な要素であり,特にマイクロ・ナノメートルスケールで比表面積が大きくなるにつれ,その影響はきわめて顕著となる.ナノテクノロジーの発展にともなって,ナノドラッグキャリヤ,ナノ輸送管,ナノロボット等のNEMS研究開発が行われているが,これらのデバイスが液体と接触する際に正しく動作させるためには,ナノメートルスケールにおける「濡れ※」を十分に知っておく必要がある.なぜなら,このスケールではナノメートルスケールの微小構造特有の性質が発現することによってマクロなスケールとは異なる性質を示すことがあるからである.
本研究では,直径数ナノメートルのカーボンナノチューブ(CNT)1本の濡れ性を力計測によって調べ,ナノメートルスケールの表面構造が濡れ性に与える影響を調べている.

※濡れ性は,一般的に液滴が固体表面に付着したときの,固体表面と液滴表面がなす角度(接触角)で表され,接触角が90°未満を親水性,90°以上を疎水性という.