通電加熱によるCNT先端加工
- 2010.03.12
- Movies
透過電子顕微鏡(TEM)内で、ナノマニピュレータを用いて通電加熱を行い、多層カーボンナノチューブ(CNT)の先端に極小の突起を作る加工をしたときの動画です 。
多層CNTは、剛性に優れているため走査プローブ顕微鏡(SPM)の探針に取り付けると、従来のSPM探針よりもさらに鋭い、かつ耐摩耗性に優れた探針として使うことができます。
ただし、通常の、探針に向いている(欠陥の少ない)アーク放電製の多層CNTは直径が10ナノメートル台です。もっと先端の曲率半径の大きい(鋭い)プローブを作りたいとき、より直径の小さな単層もしくは2層からなるCNTを選択して取り付けることもできるのですが、今度は柔らかすぎることが問題になります。双方のいいとこ取りとして、剛性の高い多層CNTの先端に、単層CNTのような細い突起がある構造が、ひとつの理想系といえます。
そこで、この動画の実験では、多層CNT先端に、短い単層CNTを生やしています。向かって右側の多層CNTの閉じた先端には、外側数層だけ、あらかじめ傷を付けています。この傷は、向かって左側のCNTを軽く接触させた状態で電圧を印加した際の放電加工によるものです。この、左側のCNTを再度押し付けて接触させた状態で、今度は徐々に電圧を上げていきます。画面の上には、印加電圧の値と流れている電流値を表示しています。この動画で、電圧を4Vにあげた直後、一瞬大きな電流が流れ、その瞬間に左側の開端したCNTの先端から10nmくらいが消失したと同時に、右のCNTの先端に突起が形成されます。左側のCNTから飛んでしまったC原子の一部が、右側のCNT先端の傷の部分に供給されて、あらたなCNT状構造が形成されたと考えられます。
[unpublished data]
-
前の記事
CNT カプセルの運動 2010.03.12
-
次の記事
2007-2012 2011.11.18